■はじめに
―執筆 特定社会保険労務士 山本多聞(プロフィール)

新しく従業員が入社する場合には、社会保険および雇用保険の被保険者にする(資格取得)手続きを行う必要があります。
大まかにいうと、役員は社会保険のみ、社員は社会保険と雇用保険、パートは雇用保険のみといった区分けで手続きを行います(詳細は下記にご説明します)。
社会保険については従業員やその家族が通院などで健康保険証をすぐに必要とする場合も多く、手続きは法律上の期限にかかわらず、早めに行うとよいでしょう。
ちなみに、会社全体で、まだ社会保険および労働保険(雇用保険)に加入したことのない場合、あらかじめ新規適用および保険関係成立の手続きを行っておくことが必要となります。

■社会保険・雇用保険資格取得(加入)手続き・対象者はどこまで?
―従業員との契約の内容によって、手続きの内容が異なってきます。

・法人の代表者(代表取締役、理事長、代表社員など)、役員(取締役、理事など)
社会保険(健康保険・厚生年金) のみ加入
ただし、報酬を受けない者、非常勤の監査役をのぞく

・常勤(契約勤務時間が30時間以上かつ2ヶ月以上の契約)の従業員
社会保険(健康保険・厚生年金)、雇用保険の両方に加入
ただし、役員をのぞく

・常勤パート(契約勤務時間が20時間以上30時間未満かつ1ヶ月以上の雇用が見込まれる場合)の従業員
雇用保険のみ加入

・非常勤(契約勤務時間が20時間未満または1ヶ月以上の雇用が見込まれない場合)の従業員
手続きは必要なし

社会保険の手続きを行う際は、被扶養者を含めマイナンバーを確認します。
昨年よりマイナンバーの届け出が原則必須となっており、また、マイナンバーを届け出ると住民票のデータと社会保険の被保険者データがひも付けられ、以降の氏名変更や住所変更などの手続きが省略されるメリットがありますので、可能ならばマイナンバーを用いた手続きとしましょう。
なお、マイナンバーが不明の場合は基礎年金番号での手続きも可能です。
手続き後、本人が市町村で国民健康保険・国民年金に加入していた場合には(引き続き保険料を徴収されてしまうので)資格喪失の手続きを行うよう指示します。

執筆者(特定社会保険労務士 山本多聞)からのアドバイス
―入社時の契約と異なった時間で働く場合、追加の手続きが必要になることがあります。

原則としては入社時の契約の内容により、加入する保険の区分が決まることになりますが、入社後に実際に勤務した時間が常態として契約の内容より長かったり、短かったりする場合、その時間に見合う社会保険および雇用保険の手続きを行う必要があります。
年金事務所やハローワークの調査でチェックされる点ですので、ご注意ください。

■社会保険の資格取得手続き・期限はいつまで?

(扶養している家族がいない場合)

・健康保険・厚生年金保険 資格取得届
従業員の入社から5日以内に年金事務所へ

(扶養している家族がいる場合)

・健康保険・厚生年金保険 資格取得届
従業員の入社から5日以内に年金事務所へ
・健康保険・厚生年金保険 被扶養者(異動)届
資格取得届と同時に年金事務所へ

厚生労働省e-govによる電子申請および市販の人事労務ソフトへのAPI連携に対応しています。電子申請による省力化の効果が高い手続きです。ただし、健康保険組合の手続きがある場合は書面での手続きとなります。

■雇用保険の資格取得手続き・期限はいつまで?

・雇用保険 被保険者資格取得届
従業員の入社した月の翌月10日までにハローワークへ

厚生労働省e-govによる電子申請および市販の人事労務ソフトへのAPI連携に対応しています。電子申請による省力化の効果が高い手続きです。

雇用保険の手続きを行う際は、マイナンバーおよび雇用保険の被保険者番号を確認します。雇用保険に入っていた期間を通算できる場合がありますので、雇用保険の被保険者番号が不明の場合でも、以前の会社の名前と勤務期間を記載して手続きをします。
また、外国人の場合は在留カードの写しを提出させる必要があります。手続きの際に在留資格、在留期限などの記載を求められます。
ちなみに、雇用保険は以前の会社で退職の手続きが終わっていないと、新しい会社で入社の手続きを行うことができないので、注意が必要です。

入社時の社会保険・労働保険手続き
よくある問題と解決策

Case1

雇用保険の加入手続きを行っていなかった従業員から退職後、遡っての加入手続きを要求された。

決策

雇用保険の対象者となる場合、遡って手続きを行わなければなりません。同時に、雇用保険料の源泉徴収も遡って行うことになります。

Case2

外国人スタッフが社会保険の加入を拒否している。

決策

本国での社会保障協定に関する適用証明書がある場合は健康保険のみ加入とすることはできますが、それ以外は原則通りの対応になります。任意で社会保険に加入させないことはできません。

Case3

一時的に勤務時間が週30時間を超えてしまったが、社会保険に加入しなければならないか。

解決策

およそ1~3カ月を平均して週30時間に満たない状況であれば、社会保険に加入する必要はありません。

Case4

従業員が持病で病院にかかっているため、健康保険証がすぐに必要だと言われた。

解決策

直接年金事務所に出向いて、健康保険証に代わり資格を証明する被保険者(被扶養者)資格証明書の交付を受けます。

Case5

前の勤務先で資格喪失手続きを行っておらず、雇用保険に加入することができない。

解決策

基本は前の勤務先での手続きを待ちますが、急ぐようであれば、ハローワークから連絡をしてもらうか、当人から直接連絡するようにします。

Case6

前の勤務先で社会保険・雇用保険の資格喪失を行った日が入社日より後になっている。

解決策

前の勤務先で修正を行ってもらうか、資格取得の日を資格喪失の当日(雇用保険は翌日)にあわせます。

 お問い合わせはこちらから