■はじめに
―執筆 特定社会保険労務士 山本多聞

雇用保険・社会保険の手続きにおいて、本社と事業所(支店)がそれぞれ一つの経営組織として独立している場合には、適用事業所となります。
適用事業所としての手続きが行われている場合には「株式会社〇〇 △△支店」のような形で雇用保険・社会保険の事業所登録が行われています(登録が行われていない場合は転勤の手続きは発生しません)。
各事業所(支店)間で転勤した場合には、相手方に被保険者資格を移す手続きを行う必要があります。
ここでいう転勤とは、勤務地(配属先)が変更となる異動をさし、出張や、工事現場などでの期間が限定される作業の場合、転勤とは言えません。

■従業員が転勤した時の雇用保険手続き・期限はいつまで?

・雇用保険 被保険者転勤届
転勤の日の翌日から5日以内に転勤先のハローワークへ

厚生労働省e-govによる電子申請および市販の人事労務ソフトへのAPI連携に対応しています。電子申請による省力化の効果が高い手続きです。

■従業員が転勤した時の社会保険手続き・期限はいつまで?

・健康保険厚生年金保険 資格喪失届
転勤の日の翌日から5日以内に転勤前の年金事務所へ
・健康保険厚生年金保険 資格取得届
転勤の日の翌日から5日以内に転勤先の年金事務所へ
※転勤の場合、資格喪失日と資格取得日は同じ日になります。

厚生労働省e-govによる電子申請および市販の人事労務ソフトへのAPI連携に対応しています。電子申請による省力化の効果が高い手続きです。ただし、健康保険組合の手続きがある場合は書面での手続きとなります。

執筆者(特定社会保険労務士 山本多聞)からのアドバイス
―M&Aの手続きにおいて雇用保険の転勤届を用いる場合があります。

通常の転勤の概念からは外れますが、1つの事業が複数に分割(分社化)されるケースや、営業譲渡の結果として新しい事業主(別会社)に吸収合併される場合には、雇用保険においては資格の喪失および取得の手続きを行うことなく、転勤として扱うことができます。

従業員が転勤した時の雇用保険・社会保険手続き
よくある問題と解決策

Case1

転勤先で雇用保険の適用は別に行っているが、社会保険の適用は本社に一括している。

決策

転勤の手続きは雇用保険のみ行えば問題ありません。

Case2

そもそも支店で雇用保険・社会保険の適用を行っていない。

決策

本社と事業所(支店)がそれぞれ一つの経営組織として独立している場合には、雇用保険の適用事業所設置の手続きが必要となります。判断が不明の場合は、雇用保険の「事業場非該当承認申請調査書」を提出し、ハローワークの判断を仰ぎます。社会保険の適用についても雇用保険に準じます。

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