当事務所でもクライアントの社会保険・労働保険手続きに電子申請を活用していますが、世間一般で言われるほど単純に良いことばかりではないと考えています。
ここでは電子申請の導入をお考えの方々に向けて、実際に電子申請を導入して感じたメリット・デメリットをお伝えしていきたいと思います。
■厚生労働省がいう電子申請のメリットはホンモノか?
厚生労働省のe-gov(電子申請)サイトによると、電子申請を導入することで以下のようなメリットがあると書かれています。
- 24時間、時間にとらわれることなく申請を行える
- 複数の窓口を回る手間を削減できる
- 申告書・届出書を手書きする手間を削減できる
- 窓口へ出向く時間・交通費などのコストを削減できる
- 書類の紛失や情報漏洩に関するセキュリティの向上
ここには電子申請導入のメリットばかりが書かれていますが、最初にPCやICカードリーダなどの機器、通信環境など、設備投資のコストがかかることを忘れてはいけません。
また、電子申請に不慣れであれば、手書きの申請書を届け出るよりかえって時間がかかってしまうこともあります。
しかし、実際に電子申請を導入してみて、手続きに慣れた上であれば、およそ厚生労働省の言う通りのメリットがあるといえ、導入に要する時間やコストは回収することができるといえます。
デジタルでの手続きに抵抗がないのであれば、導入に挑戦してみても良いのではないでしょうか。
■電子申請の利用しづらい点とは?
・良くも悪くもデジタル
電子申請は慣れてしまえば便利で効率が良いものですが、手続きの段階ではデータを紙で出力しないため、人手によるチェックがしづらく、入力ミスが発生しやすい環境にあるといえます。
たとえば、これまでは完成した書類を事業主が確認し、記名押印を行っていたところが、電子申請になると、電子証明書を添付することによって記名押印に代えるため、確認のタイミングが少なくなってしまいます。
また、書類での手続きのように提出時に書類の確認を行わないため、その場で補正や確認を行うことができず、後日になって書類が返戻されたりすることがしばしばあります。
書類の作成時には、これまで以上に注意して記載内容を確認する必要があります。
・役所側の処理に時間がかかる
書類での手続きに慣れていると、電子申請特有の融通の利かなさ(細かいミスを人手で補正してくれない)や手続き完了までのタイムラグ(手続き完了まで数日~数週間かかることも)によって、かえって手続きの完了までに時間がかかるように感じられます。
資格取得(入社)時の健康保険証や資格喪失(退職)時の離職票など、書類がすぐに必要だというときに手続きが完了せず、困ることもしばしばあります。
今後改善されるとは思うのですが、役所側の処理のスピードにおいては書類での手続きがまだまだ優勢です(電子申請によって会社側の処理のスピードを短縮することができるならば、トータルの時間で五分五分には持っていけるかもしれません)。
・電子申請に対応しない手続きも多い
健康保険組合および労働保険事務組合の手続きは、今のところ電子申請に対応していません。
たとえば、健康保険組合加入の企業が電子申請を導入した場合には、厚生年金保険については電子申請、健康保険については組合に書類での手続き、といったように申請方法が複数発生してしまうことになります。
また、労災保険の給付に関する手続きや健康保険協会への手続きは、今のところ電子申請に対応していませんので、いずれにしても書類での手続きが残ることにはなります。
■電子申請を導入しやすくする方法とは?
電子申請には政府が提供するe-govのサイトから申請する方法と、市販の電子申請対応ソフト(クラウド人事労務システムなど)を利用して申請する方法があります。
e-govによる電子申請は操作が複雑で、入力の手間が多い、手続き状況を確認できないなど、今のところ利用しやすい環境とはいえません。
電子申請を行う場合には、これらの問題を解決(軽減)した市販の電子申請対応ソフトの利用を前提に考えるのがよいでしょう。
東京人事労務ファクトリーでは電子申請の導入サービスを行っておりますので、お気軽にご相談ください!