■はじめに
―執筆 特定社会保険労務士 山本多聞(プロフィール)
社会保険(健康保険・厚生年金)の被扶養者に異動があった場合、その都度5日以内に手続きを行う必要があります。
異動とは結婚、出産、就職、死亡などにより扶養している家族の状況に変化が生じたことを指します。
とくに子供が生まれたときなどは保険証がすぐに必要となる場合も多く、保険証の交付に時間がかかるため、手続きは法律上の期限にかかわらず早めに行うとよいでしょう。
■社会保険の被扶養者・対象者はどこまで?
―所得税法上の被扶養者とは概念が異なるので、ご注意ください。
以下のすべての条件を満たす場合に被扶養者となります。
・被保険者の配偶者、子、父母、祖父母、弟妹で、主として被保険者に生計を維持されている者(別居でも可)、または、被保険者の三親等以内の親族か事実婚による相手方の父母または子であること(同居のみ)
※ 主として被保険者に生計を維持されている者とは、目安として、生計費の半分以上を被保険者から補助されている者を指します。
・年収が1,300,000円未満であること(被扶養者となる者が60歳以上、または一定の障害者である場合は1,800,000円未満)
・75歳未満であること
※ 75歳以上は市区町村の後期高齢者医療制度に加入するため
執筆者(特定社会保険労務士 山本多聞)からのアドバイス
―被扶養者は多い方がお得です。
何人被扶養者がいても従業員本人の社会保険料は変わらないので、可能な限り被扶養者とした方がお得といえます。
■社会保険の被扶養者(異動)手続き・期限はいつまで?
・健康保険被扶養者(異動)届
→ 事実発生から5日以内に年金事務所へ
被扶養者追加のタイミングは主に以下の通りです。
- 入社時に被扶養者がいるとき
- 結婚して配偶者を扶養するとき
- 子供が生まれたとき
- 配偶者が退職したとき
■出産育児一時金請求の手続き・期限はいつまで?
家族が出産したときは、健康保険から、子供1人につき420,000円の出産育児一時金が受けられます。その際の手続きは以下の通りです。
・(家族)出産育児一時金請求書
→ 出産日の翌日から2年以内に健康保険協会へ(出産前に病院に申し出ることによりこの手続を省略し、病院への出産費用の支払に充てることができます。)
※保険給付にかかる請求のため、2年の時効となります。
被扶養者削除のタイミングは主に以下の通りです。
- 親族が就職したとき
- 離婚したとき
- 親族が75歳になったとき
※退職時は従業員本人(被保険者)の資格喪失をもって同時に被扶養者資格の喪失も行われるため、被扶養者の手続きは必要ありません。
その他の手続きも被扶養者(異動)届で行います。
- 氏名変更があったとき
- その他訂正事項があったとき
■家族埋葬料請求の手続き・期限はいつまで?
家族が亡くなったときは、健康保険から、50,000円の埋葬料が受けられます。その際の手続きは以下の通りです。
・家族埋葬料請求書
→ 埋葬を行った日の翌日から2年以内に健康保険協会へ
※保険給付にかかる請求のため、2年の時効となります。
社会保険の被扶養者(異動)手続き
よくある問題と解決策
Case1
家族が持病で病院にかかっているため、健康保険証がすぐに必要だと言われた。
解決策
直接年金事務所に出向いて、健康保険証に代わり資格を証明する被保険者(被扶養者)資格証明書の交付を受けます。
Case2
扶養している妻がパートの勤務先で一時的に月収150,000円になってしまったが、被扶養者を外れなければならないか。
解決策
およそ1年を通して年収1,300,000円に満たない見込みであれば、被扶養者を外れる必要はありません。
Case3
外国に住んでいる親に送金をしているが、被扶養者に入ることはできないか。
解決策
日本に住所を有することが要件となるため、被扶養者とすることはできません。なお、留学生などで日本に生活の基礎がある場合には、被扶養者にできるとされています。
Case4
被扶養者とする際にマイナンバーを届け出ているので、氏名変更の届け出は必要ないか。
解決策
被扶養者については今のところ、マイナンバーを登録していても氏名変更の手続きは省略されません。通常と同じく、被扶養者(異動)届で手続きを行う必要があります。