■はじめに
―執筆 特定社会保険労務士 山本多聞
日ごろから社会保険や雇用保険の手続きをしていると、しばしば、氏名の漢字やフリガナの間違いが出てきます。
たとえば、渡邊さんを渡邉さんにしたり、髙橋さんを高橋さんにしたり…。また、最近の子供さんは変わった名前が多く、しばしば伝達時に間違えてしまうこともあります。
資格取得時の手続きですと、賃金の額が手当の支給などで当初の予想と大きくずれたり、年金手帳や雇用保険証を複数枚持っていたりといったような事が、手続き後に発覚する場合があります。
こうした場合に、氏名や生年月日などを間違えたままにしておくと、実際に病院で保険にかかるとき、あるいは、失業給付や年金を受ける時などの際に支障が出ることがあります。
また、標準報酬月額が実際の報酬額と大きくずれていると、年金事務所調査の際などに指摘され、修正しなければならないことがあります。
遅れてしまいがちですが、必ず正しいデータに修正する手続きを取っておきましょう。
■間違いが見つかった時の社会保険手続き・期限はいつまで?
(氏名に間違いが見つかった場合)
・健康保険・厚生年金保険 氏名変更(訂正)届
→ 事実が発覚してから速やかに年金事務所へ
健康保険証については正しいものと差し替えになりますので、間違えたものは手続き時に年金事務所(健康保険協会)へ返却します。
(生年月日・資格取得日・報酬などに間違いが見つかった場合)
・健康保険・厚生年金保険 資格取得(取得等訂正)届
→ 事実が発覚してから速やかに年金事務所へ
資格取得届の用紙に朱書きで訂正を行います。めったにありませんが、そもそも資格取得の手続き自体が間違いであった場合も同様です。
(年金手帳が複数枚見つかった場合)
・基礎年金番号重複取消届
→ 事実が発覚してから速やかに年金事務所へ
従業員が年金手帳を複数枚所持していることがあります。各々の年金手帳に書かれた基礎年金番号に応じた保険料納付期間(被保険者期間)があり、これらを通算することで年金額が多くなりますので、必ず年金手帳(基礎年金番号)を統合する手続きを行いましょう。
執筆者(特定社会保険労務士 山本多聞)からのアドバイス
―間違えた健康保険証でも、事業所番号や被保険者番号は変わりません。
手続きを間違えてしまった健康保険証でも、一度振り出された事業所番号や被保険者番号は変わりません(資格取得の手続きを取り消す場合、その番号は欠番になります)。
これにより、もし、病院などに通院中の場合には、間違えた健康保険証であっても、事情を説明すれば受け付けてくれることがあります。
■間違いが見つかった時の雇用保険手続き・期限はいつまで?
(氏名・生年月日に間違いが見つかった場合)
・雇用保険 被保険者資格取得等届訂正願
→ 事実が発覚してから速やかにハローワークへ
(雇用保険被保険者証が複数枚見つかった場合)
・雇用保険 被保険者証統一届
→ 事実が発覚してから速やかにハローワークへ
氏名・生年月日・報酬などに間違いが見つかった時などの手続き
よくある問題と解決策
Case1
従業員の入社時に予定していた以上に手当を支払うことになり、当初予定していた標準報酬の範囲を上回るが、訂正の手続きが必要か。
解決策
1等級の差であれば、一般的には取得等訂正の手続きの必要はないとされています。2等級以上の差であれば、取得等訂正が必要です。
Case2
以前に社会保険の手続きでマイナンバーを届け出たことがあるため、データが住民票とひも付けられ、氏名やフリガナの間違いはそもそも起こらないのではないか。
解決策
マイナンバーを届け出ると住民票のデータと社会保険の被保険者データがひも付けられ、資格取得届の氏名やフリガナに間違いがあっても住民票のデータ通り補正されるはずなのですが、今のところそのようにはなっておりません。