■はじめに
―執筆 特定社会保険労務士 山本多聞
従業員が産前産後休業(産後56日)に続いて、育児・介護休業法による育児休業を取得する場合、雇用保険および社会保険からさまざまな特典を受けることができます。
育児休業は原則として子が1歳に達するまで(子が保育所に入所できないなどの事情がある場合は1歳6ヶ月および2歳まで延長)の間で、従業員が申し出た期間となります。
特典としては、まず、社会保険料が、育児休業に入った月から育児休業が終了した月の前月まで、全額免除となります。
従業員分のみならず会社負担分についても全額免除となりますので、負担なく従業員に育児休業を取得してもらうことができます。
また、出産前に雇用保険の被保険者期間が12ヶ月以上ある場合には、育児休業期間中に手続きを行うことで、育児休業開始時賃金日額(休業開始前の賃金)の67%(育児休業の開始から181日目以降は50%)にあたる育児休業基本給付金が支給されます。
■育児休業中の保険料免除を受ける時の手続き・期限はいつまで?
・健康保険・厚生年金保険育児休業等取得者申出書
→ 育児休業開始後、年金事務所へ
※期間の定めはありませんが、社会保険料が間違った額で徴収されてしまうので、早めに届け出を行います。
なお、休業終了予定日前に当該育児休業等を終了した場合は、「健康保険・厚生年金保険育児休業等取得者終了届」を提出します。
■休業終了予定日前に当該育児休業等を終了した時の手続き・期限はいつまで?
・健康保険・厚生年金保険育児休業等取得者終了届
→ 育児休業終了後、年金事務所へ
※期間の定めはありませんが、社会保険料が間違った額で徴収されてしまうので、早めに届け出を行います。
■育児休業中に給与の支払いがない時の手続き・期限はいつまで?
育児休暇の間に給与の支払いがない場合、子供が1歳(最大2歳)になるまで、育児休業開始時賃金日額(休業開始前の賃金)の約67%(育児休業開始から181日目以降は約50%)にあたる育児休業基本給付金が支給されます。その際の手続きは以下の通りです。
※休業開始前の2年間に賃金支払基礎日数11日以上ある月が12月以上あることが条件となります。
・休業開始時賃金月額証明書・(初回)育児休業基本給付金支給申請書
→ 最初に支給を受けようとする支給対象期間の初日(育児休業開始日)から起算して4ヶ月を経過する日の属する月の末日までにハローワークへ
※休業開始時賃金月額証明書については育児休業開始から10日以内が提出期限とされていますが、初回の育児休業基本給付金支給申請書の申請期限までに提出すれば差し支えありません。
初回の手続き後は、2ヶ月ごとに育児休業基本給付金の申請を行っていきます。それぞれハローワークから指定される期間を過ぎると本人が給付金を受けられなくなってしまうため、確実に手続きを行うようにします。
・育児休業基本給付金支給申請書(2回目以降)
→ 指定された期間にハローワークへ
執筆者(特定社会保険労務士 山本多聞)からのアドバイス
―いわゆる「パパ育休」に対しても手続きの対象になります。
妻が産後休業(56日)に入る期間以降、夫は育児・介護休業法による育児休業を取得することができます。パパ育休の期間については原則として子が1歳に達するまでとなりますが、以下の要件をすべて満たす場合は1歳2ヶ月に延長されます。
- 育児休業を取得しようとする従業員(以下「本人」)の配偶者が、子の 1 歳に達する日(1歳の誕生日の前日)以前において育児休業をしていること
- 本人の育児休業開始予定日が、子の 1 歳の誕生日以前であること
- 本人の育児休業開始予定日が、配偶者がしている育児休業の初日以降であること
従業員が育児休業を取得する際の手続き
よくある問題と解決策
Case1
育児休業期間中に出勤があったので、そのまま育児休業を終了として差し支えないか。
解決策
完全に休業終了でなく一時的な出勤の場合であれば、育児休業を継続し、育児休業基本給付金を引き続き受給することが可能です。まずは、出勤日以降の予定を確認しましょう。
Case2
育児休業基本給付金の申請時期を逃してしまい、受給できなくなってしまった。
解決策
決められた期間に申請を行わねばならないため、時期の管理を行う必要があります。
Case3
育児休業基本給付金を夫婦で同時に受けるということはあり得るのか。
解決策
子が1歳に達するまでの期間は夫婦で同時に育児休業を取得することが可能であり、育児休業給付金も同様に夫婦に対して支給されます。
Case4
育児休業期間中に給与を支払った場合、育児休業基本給付金を受けることはできないのか。
解決策
育児休業期間中に給与の一部が支払われた場合、育児休業基本給付金の額と合計して休業開始前の賃金の80%を超えなければ育児休業基本給付金は全額支給され、80%を超えた場合は、超えた分が減額されます。給与を支払う場合には目安とすると良いでしょう。