■はじめに
―執筆 特定社会保険労務士 山本多聞

「事前に知らずに法人を設立した」という方がほとんどなのですが、株式会社などの法人を設立した場合、社長1人だけであっても、社会保険(健康保険、厚生年金)に加入することが法律上定められています。

売り上げなどの見通しが立っていない段階から社会保険に加入することは難しいかと思います。

しかしながら、最近では年金事務所からの加入勧奨(社会保険に加入するように働きかけること)が厳しくなっており、新設の法人に対しても行われますので、法人を設立した時点で社会保険に加入することや社会保険料のコストは念頭に置かれるのがよろしいかと思います。

また、社会保険に加入していないと、ハローワークで求人票が受理されなかったり、一部の雇用関係の助成金の申請に支障が出る場合もありますので、ご注意ください!

■法人設立時の社会保険新規適用(加入)手続き・期限はいつまで?
―法人設立後、すぐに必要になります。

・健康保険・厚生年金保険 新規適用届
法人設立後、10日以内に年金事務所へ

・健康保険・厚生年金保険 資格取得届
新規適用届と同時に年金事務所へ

厚生労働省e-govによる電子申請および市販の人事労務ソフトへのAPI連携に対応しています。電子申請による省力化の効果が高い手続きです。ただし、健康保険組合の手続きがある場合は書面での手続きとなります。

■法人設立時の社会保険新規適用(加入)手続き・対象者はどこまで?
―逆に言えば、下記の対象者がいなければ、手続きは不要です。

・法人の代表者(代表取締役、理事長、代表社員など)、役員(取締役、理事など)
ただし、報酬を受けない者、非常勤の監査役をのぞく

・常勤(契約勤務時間が30時間以上かつ2ヶ月以上の契約)の従業員(役員をのぞく)

■法人設立時の労働保険保険関係成立(加入)手続き・期限はいつまで?
―パート・アルバイトを雇用する場合にも、必要になります。

【一般的な業種】

・労働保険 保険関係成立届
従業員の入社から10日以内に労働基準監督署へ
・労働保険 概算保険料申告書
従業員の入社から50日以内に労働基準監督署へ

【建設業の場合】

・労働保険 保険関係成立届
(事務所労災分)→ 従業員の入社から10日以内に労働基準監督署へ
(雇用保険分)→ 従業員の入社から10日以内にハローワークへ
・労働保険 概算保険料申告書
(事務所労災分) → 従業員の入社から20日以内に労働基準監督署へ
(雇用保険分)→ 従業員の入社から20日以内にハローワークへ

厚生労働省e-govによる電子申請および市販の人事労務ソフトへのAPI連携に対応しています。電子申請による省力化の効果が高い手続きです。ただし、健康保険組合の手続きがある場合は書面での手続きとなります。

※ 建設業については保険の扱いが特殊で、労災保険と雇用保険の手続きを分けて行います。さらに現場の労災保険加入手続きも別に行う必要があります。

■法人設立時の労働保険保険関係成立(加入)手続き・対象者はどこまで?
―役員以外の従業員はすべて対象になります。

・役員を除くすべての従業員(社員、パート、アルバイトなど)

■法人設立時の雇用保険適用事業所設置(加入)手続き・期限はいつまで?
―常勤の従業員を雇用する場合、必要になります。

・雇用保険 適用事業所設置届
従業員の入社から10日以内にハローワークへ
・雇用保険 被保険者資格取得届
従業員の入社の翌月10日までにハローワークへ

厚生労働省e-govによる電子申請および市販の人事労務ソフトへのAPI連携に対応しています。電子申請による省力化の効果が高い手続きです。

■法人設立時の雇用保険適用事業所設置(加入)手続き・対象者はどこまで?
―役員以外の従業員はすべて対象になります。

・契約労働時間20時間以上かつ1ヶ月以上の契約の従業員(社員、パートなど)

執筆者(特定社会保険労務士 山本多聞)からのアドバイス
―従業員を雇用したら、労災保険の手続きだけは、必ず行ってください。

役員以外の従業員を雇用した際には、労働保険(労災保険)の手続きを必ず、すぐに行ってください。手続きが遅れている間に労災事故が起こってしまった場合、会社が多額の補償を行わなければならないこともあります。
労災保険については社会保険(健康保険・厚生年金)と比較すると、保険料もさほど高額ではないため、会社にとってもさほど負担感はありません。

法人設立時の社会保険・労働保険手続き
よくある問題と解決策

Case1

保険料が高いと聞いていたので社会保険の加入手続きを行っていなかったところ、年金事務所から呼び出され、加入の勧奨を受けた。

決策

保険料額については試算できますので、ご相談ください。最近では未加入事業所への指導が厳しくなっており、基本的に加入は避けられないので、条件について年金事務所と交渉します。

Case2

労災保険の加入手続きを行っていなかったところ、従業員が仕事中に転倒、負傷して、会社が治療費を負担することになった。

決策

アルバイトを一人でも雇用することになったら、労災保険はすぐに加入しなければなりません。意外に保険料が安いので、まずはご確認ください。

Case3

雇用保険の加入手続きを行っていなかったところ、退職した従業員から、失業給付は受けられないかと請求があり、相当する額を会社が負担することになった。

決策

法律上は雇用保険にさかのぼって加入するのが正解です。社員だけでなく、週20時間以上勤務するパートやアルバイトを雇用する場合にも雇用保険の手続きは必要となります。

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