■はじめに
―執筆 特定社会保険労務士 山本多聞

マイナンバー制度の導入により、社会保険(健康保険、厚生年金)の氏名変更届および住所変更届の提出が原則不要となりました。
一度でも年金事務所にマイナンバーを届け出れば、社会保険に関する被保険者情報がマイナンバーとひも付けされることになります。また、手続きを行わなくても、年金事務所の側で順次、職権で社会保険に関する被保険者情報とマイナンバーとのひも付けを行っており、知らないうちに氏名変更届および住所変更届の提出が不要になっていることがあります。
社会保険に関する被保険者情報とマイナンバーがひも付けされているかについては、年金事務所に問い合わせるか、従業員本人が「ねんきんネット」を参照することで、確認することができます。
ひも付けが不明の場合は、必ずひも付いていないものとして手続きを行う必要があります。
なお、雇用保険については、従来通り氏名変更届が必要となります。

■従業員の氏名変更手続き・期限はいつまで?
―マイナンバーと基礎年金番号のひも付けを確認してください。

・健康保険・厚生年金保険 被保険者氏名変更届
氏名変更後、速やかに年金事務所へ
※社会保険に関する被保険者情報がマイナンバーとひも付けされていない場合や、マイナンバーを有していない海外居住者、短期在留外国人の場合のみ

・雇用保険 被保険者氏名変更届
氏名変更後、速やかにハローワークへ

なお、事業主が氏名を変更した場合には、マイナンバーとのひも付けにかかわらず、社会保険の事業所に関する変更手続きが必要になります。

・健康保険・厚生年金保険 事業所関係変更(訂正)届
氏名変更後、5日以内に年金事務所へ

厚生労働省e-govによる電子申請および市販の人事労務ソフトへのAPI連携に対応しています。電子申請による省力化の効果が高い手続きです。ただし、健康保険組合の手続きがある場合は書面での手続きとなります。

■従業員の住所変更手続き・期限はいつまで?
―雇用保険の手続きはありません。

・健康保険・厚生年金保険 被保険者住所変更届
氏名変更後、速やかに年金事務所へ
※社会保険に関する被保険者情報がマイナンバーとひも付けされていない場合のみ

電子申請の手続きには対応せず、書面での手続きとなります。

ちなみに、住民票上の住所が登録されるため、その他の場所に居住する場合には、協会けんぽや日本年金機構からの書類の郵送先を別に登録する必要があります(すでに住民票上の住所以外に居住しており、協会けんぽや日本年金機構からの書類が郵送されている場合には、登録は不要です。)。

執筆者(特定社会保険労務士 山本多聞)からのアドバイス
―マイナンバーとひも付けされている場合、住民票の変更をもって手続き完了となります。

社会保険に関する被保険者情報がマイナンバーとひも付けされている場合には、住民票の更新をもって自動的に社会保険の氏名および住所データが書き換えられ、会社に新しい健康保険証が送られてきます。
新しい保険証が送られてくるまでは、古いものを使って差し支えありません。
送られてきたところで差し替え(古い健康保険証はおよそ新しいものが届いてから1ヶ月以内に年金事務所へ返却)となります。

従業員の氏名変更・住所変更手続き
よくある問題と解決策

Case1

マイナンバーの届け出を行っているので、雇用保険の氏名変更届を出さないでいた。

決策

マイナンバーの届け出で手続きを省略できるのは社会保険(健康保険・厚生年金)のみとされているため、雇用保険の手続きは必要です。

Case2

結婚して氏名が変更となったが、新しい保険証が手元に来るまで古いものを使用してもよいか。

決策

問題ありません。医療機関の窓口では手続き中の旨をお伝えください。

Case3

引っ越しの際は住民票上の住所を変更する必要があるのか。

解決策

住民基本台帳法により、引っ越しの際は住民票も変更(転居)の手続きをするものとされています。何か事情があって他の場所に居住する場合には、社会保険関係の書類の郵送先を別に登録しておきましょう。

Case4

マイナンバーの通知カードしかもっていないが、社会保険のデータとひも付けされることはあるのか。

解決策

あります。マイナンバーカードの有無は社会保険とのひも付けに特に関わりありません。

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