■はじめに
―執筆 特定社会保険労務士 山本多聞

従業員が業務以外の病気やケガ(インフルエンザ、うつ病、骨折など)で休業した場合、仕事ができないことに関して医師の証明を受けることで、休業4日目から最長で1年6ヶ月まで、標準報酬日額(標準報酬月額の30分の1)の3分の2に当たる傷病手当金の支給を受けることができます。
傷病手当金の支給を受けられる期間は、同一の傷病につき最初の支給から「暦日で」1年6ヶ月となります。
そのため、病気やケガがいったん回復して職場に復帰し、再度悪化して休業に入った場合にはそこから1年6ヶ月ではなく、最初に支給を受けてから1年6ヶ月までとなります。
なお、傷病手当金の支給申請は、通常、従業員の給与計算期間にあわせ、1~2ヶ月ごとに1回行います。

執筆者(特定社会保険労務士 山本多聞)からのアドバイス
―4日以上の欠勤を行う際は医師の診断書を提出させるようにします。

あらかじめ、就業規則などで「従業員が4日以上欠勤をするときは医師の診断書を提出すること」と、定めておくと、会社としては休業の見込み日数を把握することができるので、傷病手当金の申請を行うかを判断するのに有効です。

■傷病手当金支給申請・手続きが可能となる要件は?

以下のすべての要件を満たす場合に傷病手当金支給申請の手続きが可能となります。

  • 業務外の事由による病気やケガの療養のための休業である。
    ※業務上・通勤災害によるもの(労災保険の給付対象)、病気とみなされないもの(美容整形など)は支給対象外です。
  • 連続する3日間を含み、4日以上仕事に就けない状態である。
    ※連続する3日間には、有給休暇、土日・祝日等の公休日も含まれるため、給与の支払いの有無は関係ありません。
  • 休業した期間について報酬の支払いがない。
    ※休業期間中に報酬の一部が支払われる場合、傷病手当金は標準報酬日額の3分の2との差額が支給されます。

■傷病手当金支給申請・手続き・期限はいつまで?

従業員が病気またはケガにより4日以上欠勤し、報酬を受けないときは、健康保険から、1日につき標準報酬日額(標準報酬月額の30分の1)の3分の2にあたる傷病手当金が受けられます。その際の手続きは以下の通りです。

・健康保険傷病手当金支給申請書
各休業日から2年以内に健康保険協会へ
※保険給付にかかる請求のため、2年の時効となります。

欠勤の原因が外傷である場合、以下の届け出も必要になります

・健康保険 負傷原因届
傷病手当金支給申請書と同時に健康保険協会へ

電子申請の手続きには対応せず、書面での手続きとなります。

傷病手当金の支給は原則として退職日までとなりますが、退職日の時点で社会保険の被保険者期間が継続して1年以上あり、現に傷病手当金を受けているか、受けられる状態であれば、退職後も引き続き傷病手当金の支給を受けることができます。

執筆者(特定社会保険労務士 山本多聞)からのアドバイス
―最初の3日は有給休暇の消化に充てましょう。

傷病手当金の支給は欠勤の4日目からですので、最初の3日間は休日にあたらない限りは欠勤控除の扱いになってしまいます。
そこで、有給休暇が残っている場合は、最初の3日間に消化することをお勧めします。2019年からは年5日の有休休暇の付与が義務付けられていますので、残った有給休暇を消化するよい機会です。

健康保険の傷病手当金支給申請手続き
よくある問題と解決策

Case1

役員がインフルエンザで休んだ場合でも、傷病手当金を受けることはできるのか。

決策

役員であっても、要件に該当すれば傷病手当金を受けることができます。ただし、休業期間中に役員報酬を受けていないことが条件となりますので、ご注意ください。

Case2

スキー場で転倒して骨折してしまったが、傷病手当金を受けることはできるのか。

決策

まったく問題ありません。

Case3

医師の証明を依頼したところ、欠勤した期間と食い違っていた。

解決策

傷病手当金が支給されるのは仕事に就けないと医師が認めた期間に限られます。まずは医師に調整可能か確認をとりましょう。

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