■はじめに
―執筆 特定社会保険労務士 山本多聞

従業員が育児・介護休業法による介護休業を取得する場合、雇用保険から介護休業給付を受けることができます。
介護休業は対象となる家族(配偶者、子、孫、祖父母、兄弟姉妹)が常時介護を要する状態にあり、対象となる家族1人につき通算して93日(3回まで申請可能)を上限として、従業員が申し出た期間となります。
出産前に雇用保険の被保険者期間が12ヶ月以上ある場合には、介護休業終了後に手続きを行うことで、介護休業開始時賃金日額(休業開始前の賃金)の67%にあたる介護休業給付金が支給されます。

■介護休業給付金支給申請・手続きが可能となる要件は?

以下のすべての要件を満たす場合に介護休業給付金支給申請の手続きが可能となります。

  • 対象となる家族(配偶者、父母、子、祖父母、兄弟姉妹、孫)が負傷、疾病、または障害により2週間以上にわたり常時介護を要する状態にある。
  • 対象となる家族1人につき通算して93日(3回まで申請可能)を上限として、従業員が介護休業の申し出を行い、休業している。
    ※介護休業は3回まで小分けにして取得することもできます。
  • 介護休業を開始した月から1ヶ月ごとに区切った期間(支給単位期間)の初日から末日まで雇用保険に加入している。
    ※1ヶ月以内に介護休業を終了した場合はその期間です。
  • 支給単位期間に就業していると認められる日数が10日以下である。
    ※介護休業期間に一時的に出勤をしても、介護休業を継続し、介護休業給付金を引き続き受給することが可能です。

■介護休業給付金支給申請・手続き・期限はいつまで?

介護休業の間に給与の支払いがない場合、対象となる家族1人につき通算して93日になるまで、介護休業開始時賃金日額(休業開始前の賃金)の約67%にあたる介護休業給付金が支給されます。その際の手続きは以下の通りです。
※介護休業の間に給与の一部が支払われた場合、介護休業給付金の額と合計して休業開始前の賃金の80%を超えなければ介護休業給付金は全額支給され、80%を超えた場合は、超えた分が減額されます。

・休業開始時賃金月額証明書・介護休業給付金支給申請書
介護休業終了後に職場復帰し、2ヶ月経過後の月末までにハローワークへ
※休業開始時賃金月額証明書については介護休業開始から10日以内が提出期限とされていますが、介護休業給付金支給申請書の申請期限までに提出すれば差し支えありません。

厚生労働省e-govによる電子申請および市販の人事労務ソフトへのAPI連携に対応しています。電子申請による省力化の効果が高い手続きです。

執筆者(特定社会保険労務士 山本多聞)からのアドバイス
―ただし、社会保険料の免除はありません。

介護休業の期間中は育児休業と異なり、支払い給与がなくとも、健康保険料と厚生年金保険料が会社負担・従業員負担両方ともかかります。
会社としては、従業員に支払う給与から源泉徴収ができないので、いったん立て替えて年金事務所に保険料を納付して、あとで職場に復帰した時に精算する取り扱いが多いようです。介護休業を取得する従業員にとっては厳しいですね…。

従業員が介護休業を取得する際の手続き
よくある問題と解決策

Case1

介護休業給付金の申請時期を逃してしまい、受給できなくなってしまった。

決策

決められた期間に申請を行わねばならないため、時期の管理を行う必要があります。

Case2

介護休業給付金の支給を93日分行った従業員が、1年後に再度、同じ家族の介護休業給付金の申請を希望している。

決策

育児・介護休業法による介護休業とはならず、介護休業給付金の対象とはなりません。

Case3

介護休業給付金の支給を93日分行った従業員が、1年後に再度、他の家族の介護休業給付金の申請を希望している。

解決策

新たに育児・介護休業法による介護休業が認められ、介護休業給付金の対象となります。

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