■はじめに
―執筆 特定社会保険労務士 山本多聞

従業員を1人でも雇用している場合には労働保険(労災保険・雇用保険)の適用事業となり、最低でも1年に1回は労働保険料を申告して納付する手続きが必要となります。
労働保険では、新年度の(4月1日から3月31日まで)の労働保険料を賃金見込み額で計算し、前納するシステムをとっています。これを概算保険料といいます。
年度の終了後、前年度に実際に支払った賃金額で労働保険料を計算します。これは確定保険料といいます。
前年度の確定保険料の精算と新年度の概算保険料の申告は、1枚の用紙で同時に行います。これを「労働保険料の年度更新」といい、毎年6月1日から7月10日までに必ず行わなければなりません。
労働保険料の年度更新をもって、概算保険料として前納していた保険料額と確定保険料との差額を計算し、不足する額の納付を行い、あるいは還付を受けます。
年度更新以外にも、事業の廃止・休止や賃金見込み額の増加など労働保険料の申告を行う必要が生じる場合があるので、注意しましょう。

■労働保険 概算・確定保険料申告(年度更新)・手続きが必要となるタイミングは?

以下の要件に該当する場合に労働保険概算・確定保険料申告の手続きが必要となります。

年度末における労働保険年度更新(前年度および新年度の労働保険料を申告する手続き)

■労働保険 概算・確定保険料申告(年度更新)の手続き・期限はいつまで?

(一般的な業種)

・労働保険 概算・確定保険料申告書
毎年6月1日から7月10日までに労働基準監督署へ

(建設業の場合)

・労働保険 概算・確定保険料申告書
(事務所労災分)→ 毎年6月1日から7月10日までに労働基準監督署へ
(雇用保険分)→ 毎年6月1日から7月10日までにハローワークへ
(現場労災分)→ 毎年6月1日から7月10日までに労働基準監督署へ

・労働保険一括有期事業報告書
申告書と同時に労働基準監督署へ

・一括有期事業総括表
申告書と同時に労働基準監督署へ

厚生労働省e-govによる電子申請および市販の人事労務ソフトへのAPI連携に対応しています。電子申請による省力化の効果が高い手続きです。ただし、労働保険事務組合の手続きがある場合は書面での手続きとなります。

■労働保険 確定保険料申告・手続きが必要となるタイミングは?

  • 事業を廃止・休止・合併するとき、または労働者数がゼロになり雇用の見込みがないとき
  • 労災保険率表における事業の種類を変更したとき
    ※必要のない場合もあるため、労働基準監督署に確認すること
  • 労働保険事務組合に事務処理を委託するとき

■労働保険 確定保険料申告の手続き・期限はいつまで?

(一般的な業種)

・労働保険 確定保険料申告書
→ 事業の廃止・休止・合併から50日以内に労働基準監督署へ

(建設業の場合)

・労働保険 確定保険料申告書
(事務所労災分)→ 事業の廃止・休止・合併から50日以内に労働基準監督署へ
(雇用保険分)→ 事業の廃止・休止・合併から50日以内にハローワークへ
(現場労災分)→ 事業の廃止・休止・合併から50日以内に労働基準監督署へ

・労働保険一括有期事業報告書
申告書と同時に労働基準監督署へ
・一括有期事業総括表
申告書と同時に労働基準監督署へ

厚生労働省e-govによる電子申請および市販の人事労務ソフトへのAPI連携に対応しています。電子申請による省力化の効果が高い手続きです。ただし、労働保険事務組合の手続きがある場合は書面での手続きとなります。

■労働保険 増加概算保険料申告・手続きが必要となるタイミングは?

年度末までの賃金見込み額が増加し、申告済の賃金見込み額の2倍を超え、かつ、既に納付した概算保険料の額との差額が130,000円以上となるとき

■労働保険 増加概算保険料申告の手続き・期限はいつまで?

(一般的な業種)

・労働保険 増加概算保険料申告書
賃金総額の増加が見込まれた日から30日以内に労働基準監督署へ

(建設業の場合)

・労働保険 増加概算保険料申告書
(事務所労災分)→ 賃金総額の増加が見込まれた日から30日以内に労働基準監督署へ
(雇用保険分)→ 賃金総額の増加が見込まれた日から30日以内にハローワークへ
(現場労災分)→ 賃金総額の増加が見込まれた日から30日以内に労働基準監督署へ

厚生労働省e-govによる電子申請および市販の人事労務ソフトへのAPI連携に対応しています。電子申請による省力化の効果が高い手続きです。ただし、労働保険事務組合の手続きがある場合は書面での手続きとなります。

執筆者(特定社会保険労務士 山本多聞)からのアドバイス
―数日の遅れで追徴金が課されることはありませんが、期限通りに手続きを行いましょう。

労働保険料の申告が期日より遅れると、政府(労働局)が納付すべき労働保険料の額を決定し、さらに追徴金(納付すべき労働保険料の10%)を課されることがあります。
数日の遅れで追徴金が課されることはありませんが、期限通りに手続きを行いましょう。

労働保険 概算・確定保険料申告の手続き
よくある問題と解決策

Case1

新年度の賃金見込み額が前年度の1.5倍ほどになるが、概算保険料もその額にするのか。

決策

賃金見込み額が2倍を超えないようであれば、前年度の賃金額を新年度の賃金見込み額としていただいて構いません。ただし、年度の途中で2倍を超える見込みとなった場合には、30日以内に増加概算保険料の申告が必要になります。

Case2

賃金総額には従業員に支払ったもののうち、どこまでを含めるのか。

決策

毎月支払うものの例としては、基本給および諸手当、通勤交通費、臨時に支払われるものの例としては、賞与、インセンティブの総額で、源泉徴収を行う前のものとなります。

Case3

申告書に記載されている一般拠出金とはなにか。

解決策

石綿被害者の健康被害を救済するために全事業主から一律に徴収される費用で、労働保険料の計算の対象となる賃金総額に一般拠出金率(0.02)を掛けて計算し、労働保険料(確定保険料)と併せて申告・納付するものです。

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